「稲田石」は、茨城県笠間市稲田で採掘される白御影石です。国産白御影の代表格ともいえる石材で、これほど白が際立つ石は他にないとさえ言われている、評価の高い石です。とくに、白御影の外柵材としては、最も有名な石です。
岩石の稲田石に、粗目、中目、小目、糠目、黒などの商品名がつけられており、そのうち粗目、中目のものが黒雲母花崗岩で、「稲田石」「稲田御影」と呼ばれています。
この黒雲母花崗岩の稲田石は、約6千万年前に誕生し、石材として利用されるようになったのは江戸時代からです。笠間市稲田にある通称「石切山脈」と呼ばれる、南北6km、東西8kmの山地一帯で採石されます。明治22年頃から本格的に採掘されるようになり、当時から今の至るまで、常に最新式の採掘・加工技術を取り入れてきた、採掘量・業者数ともに日本最大級の産地です。現在も、採掘規模は、年間約1万2千トンにものぼり、日本一といわれています。大量に採れることと、搬出の便もよいこともあいまって(標高200〜300mのなだらかな山が多いため採掘しやすい地形になっていることと、大消費地東京から100Km位の所にあり、鉄道や国道、常磐道、鹿島港や常陸那珂港など交通の便がとてもよいこと)、大型の建築物には必ずといっていいほど、稲田石が使用されています。
歴史的建造物にも多数利用されており、明治35年竣工の三井銀行本店、明治40年竣工の日本橋の橋げた、昭和10年竣工の第一生命ビル、昭和43年竣工の鹿島神宮大鳥居30尺、明治神宮、最高裁判所、広島・平和都市記念碑などにも稲田石が使用されています。
色調は美しく、均一的な柄で、艶がよく出ます。加工性に富んでおり、磨きあがりの光沢は美しく、堅牢で、申し分の無い石材です。主に、雲母・石英・長石の3種類の鉱物が強く固まって結晶した花崗岩で、中粒の黒雲母が入っています。鉱物の構成比は、黒雲母3.8%、石英33.7%、長石62.4%、その他0.1%で、6割強を占める白色の長石が、稲田石の色調を決定づけています。硬質なだけでなく、70%以上の珪酸分を含んでいることから、酸(酸性雨)に強いという点でも耐久性に優れています。鉄分が多少入っていることがあり、サビが出やすい欠点はあります。
笠間焼という、茨城県笠間市周辺を産地とする陶器がありますが、この笠間焼の土は、稲田石の風化した成分だと言われています。見掛比重:2.63t/m3。