
戸室石(とむろいし)は、石川県金沢市の戸室山、キゴ山、医王山、戸室山で採石される、角閃石安山岩(火山岩の一種)です。医王石とも呼ばれます。その名のとおり医王山などの火山活動(※現在は休火山)で、今から約40万年前に噴出したマグマが冷えて形成されたものです。雲母や石英も含まれています。花崗岩(御影石)よりは加工しやすく、凝灰岩より強度があり、岩石の硬石と軟石の利点を兼ね備えた石材です。赤っぽい色の「赤戸室」と、青っぽい色の「青戸室」があり、一般的に「青戸室」の方が石質が緻密で堅いと言われています。
また、石の赤色は明快であるため、地方色としてあらわされ、赤と青の配色が伝統文化となりました。その色彩は、金沢の土木・建築・庭園に活かされ、高い文化を形成しました。
石質が軟らかいため、加工が容易で、石垣によく用いられており、江戸時代に建立された金沢城の石垣には、金沢城東約8Km の戸室山山麓で採掘された戸室石を使用しています。
その他、兼六園の石橋、庭石、墓石、水道管などに使われてきました。近年ではマイナスイオンの発生源として岩盤浴、ミネラルウォーターなどにも利用されており、一般には石焼き芋用の石としてよく知られています。
軟らかい反面脆いので、兼六園の石橋は通行止めにしたり架けかえたりしています。
墓石への利用としては、野田山墓地(金沢城から4キロ地点)をはじめ、寺院の武家の墓石に戸室石が多く使用されています。しかし、明治時代に前旧家の墓地はすべて神式とされたため、その後の墓石は残っていませんが、輸入石材が流入する以前から、金沢では赤青の鮮やかな色の石が墓石に用いられ、造形的に優れているものが多くあったことが知られています。