
議院石(ぎいんせき)は、広島県呉市倉橋島町納地区(瀬戸内海の芸予諸島に属する倉橋島内)で産出される花崗岩です。大正11年から採石がはじまり、国会議事堂の外装にこの石が使用されたことから「議院石」と称されるようになりました。赤色や桜色系の石材で、採掘される石の色が濃い色で安定しているため、建築材のほかに、墓石としての需要が増加しました。花崗岩の多くは、時間の経過につれて色が褪せていきますが、議院石は研磨の直後から、時間の経過とともに、鮮やかな紅色が深まっていきます。
建築業界では、「議院石」という呼び名の他、その色彩から「桜御影」とも呼ばれています。墓石業界では、濃い色のものが多く使用されることや広島県安芸地区で採掘されることから、「安芸のもみじ御影」とも呼ばれています。
埋蔵量が豊富にあることもあり、最近新たに注目をあつめています。色合いが増していく石材は他になく、色合いが増しきったところで、その後はその色をずっと維持しつづける、めずらしい石材です。
国会議事堂の建設にあたって、明治43年かあら、全国の石材産地を対象に外装用材の石材調査が始まりました。その後、大正12年にこの石に決定しましたが、「桜色の石材なら国を代表する建物にふさわしい」ことも、決定の理由のひとつであったと言われています。まだ正式名称がなかった当時は、地名から「尾立石」とも呼ばれていました。
国会議事堂の外装に最も多く使用されたのがこの議院石ですが、ほかにも二種類の花崗岩を使った石積みで造られたため、国会議事堂の全てが議院石でできているわけではありません。また、内装には、全国から取り寄せられた数十種類の石材が使用されています。