
抗火石は、「こうかせき」とも「こうがせき」とも読みます。伊豆七島の新島、式根島、神津島、伊豆半島の天城山で取れる軽石で、流紋岩の一種(浮石質黒雲母流紋岩)、もしくは浮岩に属し、水孔石、剛化石、コーガ石とも呼ばれています。東京都では石材はほとんど産出されませんが(大部分が関東ローム層で覆われているため)、伊豆諸島の新島で採れる良質の抗火石はとても有名で、巨大な採石場を有しています。抗火石は、新島の向山火山の火砕サージの上の溶岩円頂丘溶岩であり、火山は886年頃噴出したと考えられています。貴重な自然石です。抗火石はスポンジ状の構造を持っており、水に浮くほど軽く、かつては抗火石で作られた石造船もあったほどです。ガラス質で、斧やのこぎりで簡単に切断できます。
新島における埋蔵量は推定約10億トンで、明治時代から採掘されていますが、埋蔵量はまだまだあると言われています。不燃建材として重宝されてきた抗火石とよく似た自然石は他に、伊豆半島の天城の水孔石と、イタリアのリパリ島の石英粗面岩が有名です。しかし建材利用できるほどの大きな軽石を一度に大量に産出できるのは新島のみだろうと言われています。
軽量で、耐火性・断熱性・耐酸性があることから、煙突の煙道内張り、外装用のタイル、耐火モルタルの細骨材、焼却炉用資材、観賞用庭石様々な用途に使用されています。新島の住宅には、いずれかの場所に抗火石が使用されています。その他有名なところでは、渋谷駅に設置されている「モヤイ像」が抗火石で作られています。
軽量で強靭なだけでなく、断熱性・保温性に優れていることから、工業用ライニング材にも使用され、さまざまな分野でその効果が期待されています。火に強いことから抗火石と呼ばれていますが、防音性、消音性、耐圧性にも優れています。
墓石関連としては、新島を訪れると、建造物や石畳、石塀などに加工された抗火石を間近にみることができる他、白い砂が敷き詰められた美しい墓地を見ることができます。抗火石は風化にも強いと言われていますが、江戸時代に抗火石で造られた、流人の方々の墓も遺されており、お椀の形やサイコロの形など、抗火石がさまざまな形状の墓石となって今に遺されています。