
多胡石(たごいし)は、群馬県多野郡吉井町で産出する、黄褐色の中粒〜粗粒の砂岩です。主に石英と長石から構成されており、黒雲母やホルンフェルス岩片を含んでいます。第三紀層に属し、淡褐色の粗粒で木目のような模様が特徴的ですが、それは鉄分がしみ出したことによる錆状(木目調)の縞模様であり、和風建築によく調和します。また、経年により長石が変質するのですが、その中でもとくに正長石が風化して黄色に変質することによって、石材が黄褐色になります。風化・変色と聞くと、もろいのではないかと思われがちですが、耐久性には富んでいます。
日本三古碑のひとつである「多胡碑」はこの多胡石で造られており、およそ1000年前に造られたとされ、特別史蹟に指定されています。本格的な採掘は、明治〜大正初期の頃からはじまり、全国に出荷されていましたが、近年は小規模な露天掘りで採掘されていました。
採掘直後はやわらかく、乾燥すると硬化します。砂岩は、水中のいろいろな物質が堆積して固まった岩石で、やわらかいため加工しやすいのですが、風化しやすい特徴があります。主に建築材(板石・貼石として石塀・内装材・外装材に使用)と灯篭類に使用されてきました(少し古いデータですが、昭和52年の推定出荷量は、建築材が52%、灯篭類が32%前後、その他塔類などが16%)。地元では、市内の随所で多胡石の外壁や植栽基礎、灯篭などを見ることができます。
なお、多胡石は、研磨しても光沢が出ません。現在は多胡石の採掘業者が存在しないという情報もあり、墓石への加工が可能かどうかは、問い合わせが必要です。