
能勢石(のせいし)は、大阪府豊能町で採掘される、黒系の石材です。関西の代表的な黒系石材のひとつで、岩石分類は閃緑岩です。約8000万年前に形成された花崗岩の周囲に分布しています。花崗岩体の周りの、風化した真砂土の中に能勢石が玉石として存在しており、玉石で採石されています。
正式な岩石分類は石英閃緑岩で、石質がしなやかで、割れにくい特徴があります。研磨すると艶が出ますが、能勢石はその研磨の効果がとくに高いと言われています。また、石にはねばりがあります。
ところどころにアザのような黒玉が混ざっていることも特徴の一つですが、機械化されてからは黒玉の出ない部分だけが切りだされて出荷されています。
昭和10年に採掘がはじまり、第二次世界大戦戦前は建築用の延べ石の用材や、土建用の間知石、戦時中は定盤石として利用されていました。戦後しばらくまでは淡青色の石が採石されており、昭和30年頃からは黒い石に切り替えられました。外国産の黒御影石などに押されるようになってからも、黒系統の石を好む地方に相当量出荷したようです。その後は、庭園用の自然石として注目されるようになり、昭和39年頃からは、経済の高度成長とともに、お墓ブームがはじまり、相当数の能勢石が墓石用に加工され全国各地に販売されました。昭和47年に開園した大阪北摂霊園では、墓石ブームの頃に建立された多くの能勢石の墓石をみることができます。
また、墓石ブームと合わせて、全国の学校で創立○年の記念碑を建立されることもブームとなり、能勢石は記念碑に加工されてやはり全国に出荷されました。
豊能町にはまだ多くの「能勢石」が埋蔵されており、また、能勢石の道標や丁石、宝篋印塔、石灯籠、地蔵石仏などを町内の各地でみることができます。また、下坊石材に能勢石の展示場があり、約800個の記念碑など、1tから30tまでの形のよい石を見ることができます。