
飫肥石(おびいし)は、宮崎県の日南地区で産出される溶結凝灰岩の総称で、火砕流の堆積物である「シラス」が凝縮してできた石材です。九州南部一帯に厚い地層として分布している、細粒の軽石や火山灰(鮮新世から更新世にかけての火山活動による噴出物)のうち、入戸火砕流による堆積物を指してシラスといいます。飫肥石は、入戸火砕流堆積物の溶結部を切り出して使用しているものです。入戸火砕流堆積物の溶結部は北東方向(宮崎県南部、ほか)のかなり広い範囲展開していますが、現在では、日南市の「飫肥石」のほかには清武町の「清武石」しか採石されていません。
また、かつては、採石場のあるそれぞれの地名をとって「 ○○石」のように呼ばれていましたが、現在では総称して飫肥石と呼ばれています。
飫肥石のベースとなった火山の噴火は、約2万9千年前におこった姶良火山の大噴火で、雲仙賢岳の40万倍とも言われる巨大火砕流でした。南九州一帯に堆積した火砕流堆積物が、高い所では百メートル以上にもなり、約700〜800度の高熱で堆積した火砕流堆積物が自重と高熱により溶け、圧縮され、徐々に冷えて固まり岩となりました。
このようにして出来た岩が溶結凝灰岩で、宮崎県内各地で産出されました。
加工がしやすいことから、かなり古い時代から石材として使用されてきました。積むのに適していたため、石垣にもよく利用されました。産地である日南市の町並みや城の石組みに、飫肥石が多く使用されています。また、昭和53年に復元された飫肥城の大手門は、飫肥石を利用して作られています。現在では墓石のほか、敷石や、敷地を飾る塀石、牛の餌入れなどに利用されています。