
姫神小桜(ひめかみこざくら)は、岩手県盛岡市玉山区の姫神山(標高1123.8メートル)で採掘される花崗岩です。ゴマ石に淡いピンクの模様が混ざっている、独特な風合いの石目が特長です。厳しい寒さの中で採掘される、日本の風土に合った石材ですが、春を思わせる淡い桜色のやさしい色合いが神秘的でもあり、心を温かくしてくれます。
25年ほど前から採掘されはじめたという石材で、墓石用に使用される国産の花崗岩の中では、比較的歴史の浅い石材です。地域でも珍重されているのは、霊山として信仰されていた山から産出される石であるということもあるのかもしれません。地元で多く消費され、橋の欄干や、町内の様々なところにさりげなく使用されています。手頃な値段でありながら、硬度は高く、吸水率が低く、石目が美しいことから、墓石・記念碑・彫刻用に、地元のみならず、全国的にも愛され、使用されています。
岩手県は花崗岩の巨大産地であり、岩手町と盛岡市の周辺と太平洋に面した陸中海岸沿い一帯が主な産地でしたが、現在では休山のところが多く、その中で姫神小桜は現在リアルタイムで産出・消費されている、比較的めずらしい石材といえるでしょう。
なお、岩手県玉山村(現在は盛岡市玉山区)は、詩人、石川啄木の生誕地であり、代表作「ふるさとの 山に向かいて 言ふことなし ふるさとの山は ありがたきかな」は、姫神石が採掘される姫神山のことをあらわしています。比重2.66、吸水率(%)0.18 。