
花沢石(はなざわいし)の産地は、愛知県豊田市花沢町(岡崎市隣接の旧下山村)の花沢地区「六所山」です。明治20年から採掘されており、昔ながらの御影石として親しまれています。六所山は、猿投山・本宮山とともに「三河三霊山」と称されており、霊験あらたかな地から採掘される美しい石は秀麗です。白系の、目の細かい中目石で、少し青味があります。愛知の銘石として、濃色系の代表格は「牛岩青石」ですが、白系の代表格が「花沢石」です。硬い石質の中目で、むらがなく、艶出しがよいのが特徴です。
東海地方の多くのお墓で使われています。加工しやすいため、墓石材のほか、彫刻材としても使用されています。石積みの石として使用してもとても美しい石です。採掘量が豊富なため、品質が高い割にリーズナブルです。美しい色柄、上品な品質から、墓石以外でも仏像建築に使われています。天台寺門宗の総本山である三井寺(滋賀県)の大日如来座像、天台宗総本山である比叡山延暦寺(滋賀県)の伝教大師座像、イギリス・大英博物館所蔵の須弥山童子六地蔵などが有名で、古くからの豊富な実績を持っています。
松平家・徳川将軍家の菩提寺である「大樹寺(だいじゅじ)」の歴代住職のお墓はこの石で作られています。経年劣化は少ないと言われていますが、心配な方は、実際に100年単位の時を経た石の状態を確認されるとよいでしょう(大樹寺へのアクセスは、名鉄名古屋本線東岡崎駅から名鉄バス大樹寺下車徒歩10分)。良質な銘石ですが、その白さゆえに、素人目には高級そうに見えないこともあります。きめ細やかで、また粘り強い石質・適度な硬さがあり、低吸水率で高い耐久性があります。粘り強い石質は、愛知県で産出される石に多くみられる特徴でもあります。