風葬とは死者をそのままに、土に埋めるなどの方法をとらず、放置することによって葬る方法です。
東南アジア、オーストラリア、北アメリカなど多くの地域でこの方法がみられますが、日本でも沖縄や離島をはじめとした地域で行われてきました。風葬にはいくつかの方法があり、例えば樹木のうえに死者をおいて風化させる方法や、何らかの台座の上において風化させる方法、また断崖絶壁や洞窟に死者を置く方法などがあります。古来より行われてきたこの方法には、様々な意味・理由が込められています。
例えばインドネシアのボルネオ島の一部の民族では、基本的に土葬が行われているものの、高い功績をおさめた人物に対しては台座において風葬を行うという風習があります。これは一般的に人が亡くなると死者の霊となりますが、この風葬によって葬られた死者の魂は霊ではなく神になるのだと考えられていることに基づきます。つまりその人物が神となって、生前のように民族を支えてくれるのだとしているのです。
また日本の沖縄や離島周辺でこの風葬が行われてきたのには、その地理的条件が深く関係したとも考えられています。これは火葬する施設がなかったこと、また島であるが故に埋葬する土地も限られていたことなどです。宮古島においては死者を四角く囲った石垣のなかにおき、そこに放置することによって風葬しました。ただし沖縄本島では洗骨という風習もあり、風葬した後に白骨化した骨を海水・故人が産湯をつかった井戸水・泡盛などで洗い、それを骨壷におさめて亀甲墓に安置したといわれており、風葬はあくまでも死体を弔う一連の儀式のなかの通過点であったともされています。
現在でもなおこの方法がとられている地域があります。その代表ともして知られるのが、バリ島のバリ・アガの村トゥルニャンです。この村では人が亡くなったら地面の上にそのまま安置して葬るという方法が今もなお受け継がれています。さらに白骨化した骨は身体部分だけを埋葬し、頭蓋骨はそのまま墓地周辺に並べておく習慣があります。この方法の場合墓地周辺は腐敗臭などがあるように想像されますが、死体は藁などで目かくしされており、墓地周辺にはえる樹木がその匂いを消してくれていると言い伝えられています。
このように人間を自然界の一部であるとみなし、死者を風葬することによって、鳥獣にたべさせ、再び自然界の流れにのせているのだという考えが根底にあるように思われます。土葬もそうですが埋葬することによって大自然の一部・大地に戻すという考えが多少ならずとも存在します。風葬もまた、鳥獣が食べ、一部が大地にもどっていくことによって人間を自然界へと戻しているのです。チベットでは死体を放置しハゲワシに食べさせるという風習があり、鳥葬ともよばれていますが、これは死者の魂を鳥が神のもとへ運んでくれるという考えと自然回帰の考えが根底にあります。現在でも自然葬という言葉がありますが、いずれにしても同じような自然回帰の考えが根底にうけつがれているのです。
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