葬儀社主導で、粛々と行われる一般の葬儀に対して、最近では直葬という葬儀が注目され、増加する傾向にあります。直葬とは、通夜、告別式の葬儀を行わず、直接、火葬場に遺体を運んで火葬し、遺骨を直接持ち帰るという、極めてシンプルなやり方です。
直葬を行うにはいくつかの理由がありますが、一番多いのがお金がないという経済的な理由。次が信仰がない、菩提寺がないといった、宗教上の理由。次が参列者がいないという、人間関係の希薄化。次が故人が高齢だった場合は、故人を知る人がいないなどが主な理由です。直葬だからといって、遺体を自分ひとりで火葬場に運び、火葬場と交渉するというわけにはいきません。病院で亡くなった場合は、病院からの遺体搬送、納棺、安置、医師の死亡診断書、これをもとに役所が発行する火葬許可書など一連の手続きが必要です。
病院から遺体を自宅までに運ぶためには、どうしても葬儀社に依頼しなければなりませんし、遺体を収める棺も自分の手作りでというわけにはいきません。こうしたことをスムースに運ぶためには、ある程度の費用がかかりますが、それでも葬儀、告別式といった一連の儀式を普通通りにやるよりははるかに安く済みます。やり方によっては一般の葬儀の10分の1程度の費用で済む場合もあります。しかし、残された者が、故人とお別れをし、心に区切りを付ける大切な儀式をおろそかにしたくないという考え方もあります。
また直葬の欠点として、亡くなったことを後で知った、故人や遺族ゆかりの人たちが、大勢自宅に訪れることがあります。葬儀が行われれば、大勢の人が、一度にしかも集中的にお参りしてくれるので、その場で終わってしまいますが、直葬の場合は、亡くなったことを後で知った人たちが、ポツリ、ポツリと毎日のように訪れ、香典などを置いて行った場合、遺族はその対応に、かなり時間を取られます。特に忙しい人などは、家を空けるわけにも行かず、来訪を断るわけにも行かないので、葬式を安くあげたぶん結構煩雑な思いをしなければなりません。
中には連絡を受けなかった親戚から、「なぜ知らせてくれなかったのか」と抗議されることもあるので、そのへんの対応がしっかりとできるようにしておかなければなりません。
菩提寺がない、無宗教という人もいるでしょうが、僧侶の読経を求める人も出てくるでしょう。しかし、直葬は増える傾向にあるので、葬儀社の他に、直葬をサポートする業者も出ています。病院で亡くなった場合、病院では、一時的に霊安室に遺体を預かってくれますが、明日まで、などという長い時間にわたっては預かってくれないので、一通りの手続きを済ませたら、早めに遺体を引き取らなければなりません。こうした場合、遺体を搬送してくれる業者が必要ですが、直葬専門の業者が引き受けてくれます。そうした業者がいない場合は、葬儀社に頼みますが、遺体の搬送だけで結構です、とはなかなか言いにくいものです。菩提寺がある場合は、お寺に相談なしで直葬してしまうと、のちのちやりにくい問題が起きる可能性があるので、お寺に失礼に当たらないよう十分な注意が必要です。
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